WRITING 09 Apr 2013


大阪らしいデザイン

僕が大阪の特徴のひとつと考えているのは、既存の文化に異文化をダイナミックに組合せる寛容性。遣隋使や遣唐使が持ち帰った珍品をはじめ、珍品を眺めるのだけではなく自分たちの文化に取り込んだ南蛮文化、安土・桃山文化(大阪文化とも呼ばれる)では片身替りや段違いなど、ダイナミックな異物と異物の組合せを楽しんだ。礼儀作法でも上方の方が寛容で、守らなければならないという堅苦しい気概もあまりない。海水浴が入れば二色浜、野球が入れば甲子園など、外から来た異文化を取り入れ謳歌し、楽しむ寛容性こそ、大阪の文化だと感じている。駄洒落も異なるものを重ね合わせて楽しむという意味では同じ構造かも知れない。
特に、安土・桃山時代は大阪時代とも呼ばれ、特徴的なデザインが数多く生み出されている。その中でも片身替りや段違いは異なる色や文様を左右や上下、斜めに組み合わせた大阪時代を代表する奇抜で豪快な構成。左右で色や文様が全く違う着物や茶碗などを見ると、「頭がおかしい」とも思えるぐらいなのだけれど、派手で豪快、奇抜さの中に優雅さを感じることもできる。どうもそのあたりに僕は大阪を感じているように思う。
また大阪には金工系の伝統工芸も多いけれど、大阪唐木指物や大阪仏壇、大阪金剛簾、泉州桐箪笥、大阪欄間など、木工系の伝統工芸も数多い。起源を辿ると四天王寺の建立時に朝鮮から技術師を招きいれたことに行き着くらしい。江戸時代には木材の集積地として取扱い量が多かったことも一つの要因だと思うが、木工技術はとても高いそうで、大阪から全国に技術が普及して行った構図になるそうである。ちなみに、四天王寺を建立した宮大工は「金剛組」となり世界最古の企業として今も大阪の四天王寺に存在している。
その中で、木工系の「指物」と呼ばれる釘を使わずに木を組み立てる工芸は、京都や東京など全国で脈々と受継がれているので、その土地で好まれてきた雰囲気の比較がし易い。例えば江戸指物は細くて華美な装飾はなく、木目を活かした、どこか武骨な雰囲気を感じる。京指物は茶会と共に発展してきた洗練されて端正な佇まい。装飾が施されることもあるが、装飾がなくても部材は装飾的に細かったり、線で構成されたようなモダンな雰囲気。対して大阪唐木指物は、部材がまるっこくどしっとした重厚な雰囲気があり、素材も高価なものを惜しげもなく使って拭き漆で鏡のように仕上げている。大阪で好まれてきたものは「豪奢」という言葉が良く似合う。東京・京都・大阪でそれだけ違う。大阪の人はあまり意識することはないような気がしているけれど、これらはそれぞれの文化として、まだ残っているように感じている。
デザインに「大阪らしさ」を求めるのであれば、ダイナミックな異物の組合せを楽しむこと、豪奢な佇まい、このあたりが鍵になるように、僕は感じてる。