NITOは、金仏壇の伝統工芸産地、彦根のナナプラスが生み出すスタンダードな観音開きのモダン・デザインの仏壇です。鮮やかな2枚の朱塗の戸板は、開放時には側板となり内部を彩ります。
ナナプラスは、革新的なモダン仏壇を提供し続けて10年以上活動されていますが、初期はほとんどがステージ型と呼ばれる扉のない形でした。デザイン顧問として関わらせていただいている中で、内部を囲う箱型の商品を中心に提案し、商品群がひと通り揃ったように感じていました。ただ2枚の扉をもつ、いわゆる観音開きの仏壇の原型ともいえる形がぽっかりと抜けているように感じていました。その原型となる形を商品群の中央に据えないと、ナナプラスの魅力である革新的な形が映えないのではないかと提案し、群としての魅力をさらに高めることを目指しました。
ただし原型とは言え、やはりナナプラスがつくる仏壇であるという特徴を持つことは求める必要があります。ひとつは伝統的な金仏壇の産地であることから「塗り」を施すこと。もうひとつは形に革新性を持たせることです。
全体を塗ると高価になり過ぎるため限られた範囲に限定し、彦根の美しい塗りを見せるために、仏壇の顔となる2枚の扉を朱色で塗ることにしました。またその美しい朱塗りを開放時にも生かすため、扉を引き込んで内部の側板の仕上げとなるようにして、ナナプラスの革新性としています。
ところで、以前からモダン仏壇のデザイン上の課題が気になっていました。現在、国内で販売されているモダン仏壇は数多くデザインされていますが、照明の扱いが雑であることが多く、光源を隠すということはほとんど意識されていません。仏壇は基本的に見上げる位置で拝むことになりますが、建築を学んだ身としては天井に配された光源がそのまま見えてしまうことに大きな違和感を抱いていました。このNITOは、塗りを施した国産仏壇の中ではかなりコストを抑えてデザインしていますが、その条件の中で光源を見えなくするように工夫しています。