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仏壇にはさまざまな感情が付属するが、それらを脇に置いて純粋に工芸文化として眺めるとその奥深さにと構成力に驚く。もちろん仏壇製造自体にも木工、宮殿、彫刻、漆工、蒔絵、金箔押し、錺金具の高度な伝統工芸技術が備わっているが、他にも組子や紗、唐木などといったものが組み合わされることがあるし、仏壇を荘厳する際には瓔珞、緞子、軸、表具、仏像、截金、鋳物、和蝋燭、線香などさまざまな伝統工芸が加わる。それら全てを駆使し、組み合わせ構成して施主の思いに応えることになる。もちろん、絵や文様の吉祥など和の文化に対する深い知識も蓄えている。仏壇を製造販売するということは、これらの伝統工芸の知識を幅広く持ち、手配して制作全体を統括する、いわば伝統工芸のジェネラリストとしての技能が備わっている。これが(少しのコンサルタント視点を持った)デザイナーとして長年に渡って仏壇業界を眺めて気づいた、大きくそして独特の特徴のひとつだと考えている。
この特殊で他が持っていない知の蓄積を活かせないか、と提案したのが〈統合工芸〉の製作所としての可能性である。今までも依頼されて作ったり、新しく提案している実績があったが、そういったものをまとめて提案し、相談を受け付けられないかと考えた。漆を塗りたいのであれば漆の工房に相談すれば良いが、さまざまな伝統工芸を組み合わせた商品を開発したい、オーダーメイドしたいという要望に応えてくれる工房はなかなか見つからない。実際にそういった要望もあったことから、ひとまずウェブサイトを走らせることで、新しい事業へと育つ可能性を探ることになった。