この本は、清水焼を現代の生活に取入れるヒントとなるような情報提供を主題として、今日における清水焼の価値創造を目指している。特に「京焼・清水焼ある風景」のページでは、日常的に清水焼に親しんでいる方々のお話を伺い、使い方や楽しみ方を紹介している。その他、清水焼の種類などを掲載した資料ページをまとめて、清水焼そのものと、その周辺にある文化や魅力など、清水焼のおおよその全体像が把握でき、生活に導入するためのガイドブックになることを目指している。
64pと小規模ながら、多様な内容が掲載されることから、ページレイアウトもそれぞれの内容に対応させていくことにした。つまり同じレイアウトがなく、それぞれ違う様相になっている。そうすることで、ページをめくると異なる形が現れ、文字だけだったり写真だけだったり、その組み合わせの形が膨らんだりしぼんだりするストーリーをデザインで作っている。
それらのバラバラのページを2カラムと上下半分、左右半分のグリッドを組み単一性を保持している。このシステムはカタログにも適応させており、2冊は同じシステムで作られた単一性を持つペアの本として成立させることを目指している。
ただし、カタログは禁欲的にシステムをより厳密にトレースしようとしたリスト的な様相であるのに対し、この本は理念的なシステムを守ることより、システムの中でどれだけ情緒的に振る舞えるかに挑戦している。
グリッドシステムという伝統的な手法ではあるが、その中で振る舞う情緒的な操作は、様相が異なる2冊の本に単一性を持たせる真っ当な方法に過ぎない。ただそれが型と絵付けの職人が分かれてそれぞれ生み出すという清水焼という伝統工芸の生産システムと重なるようにも感じている。