儀平は滋賀県の近江商人の街のひとつ、五個荘の老舗糀屋です。老舗といっても工場も設備も全て新しく清潔にされ、その中で日本一美しいと自負される糀づくりを行っておられます。また、糀屋は街の住民に糀を売る商売で、住民はその糀を使って各家庭で味噌作りを行っていたそうです。その商売のかたちから、老舗と言っても古いものが全く残っていない状態でした。創業当時から使っている古い道具の写真でもあれば、それを見せるだけで積み上げてきた信頼と技術を力強く感じされられるという王道が使えません。しかし、まったく何もない状態からイメージを構築できることは良い機会でもある、と考えることにしました。
まず設定したのはコンセプト「水と米」です。水はその場にある土地の状態や特性、米はそこで営まれてきた人と文化を象徴しています。
滋賀県は全体を巨大なすり鉢のような岩盤に包まれ、伏流水が非常に豊富で湧き水もそこかしこで湧いています。そのすり鉢の底に溜まって現れた水が例の琵琶湖であり、膳所の名前が残るように、美味しい米や食物が豊富に採れ、常に水量が多い土地です。しかし同時に、湿潤さは食品は腐りやすくします。滋賀の豊富な発酵食品はそのような土地と人の営みから生まれたものでしょう。米をつくり、鮒寿司や酒、味噌などを発酵させてきた近江の風土とその蓄積は近江の人々が作り上げてきたものです。
これらの美味しい食材が採れる豊かな土地、その中で育まれてきた発酵文化を持ち帰っていただくこと、これを軸に置いたコンセプトが「水と米」です。儀平のみぞづくりの環境と文化、と言い換えられるものです。
まず、水として写真は梅田彩華氏に「湿潤な環境で米を育てている風景」と依頼して撮影していただきました。この風景を「近江のみそ」のパッケージとして持って返っていただくこと。
そして、米として儀平が育んできた歴史を感じさせるために、甲州手彫印章の望月煌雅氏に商品の特徴を表す4つの文字を彫っていただき、それらを使って「近江のみそ」を折形(おりかた)の作法に倣って包み、技術と文化性を添えています。
望月煌雅氏:https://koga-m.com
梅田彩華氏:https://www.umephoto.net