伝統工芸の職人や産地から「素材や建材として、伝統工芸の技術を使いたいという相談がある」という相談を受けることはそこそこ多い。建材は使われる面積が大きく、ホテルの部屋などの一部に使われるだけでも全く異なる規模の仕事になるので、日常品を作っているのと比べると魅力的に見えるのだろう。ただ少しでも挑戦したことがある人は、一筋縄ではない、ということも身に沁みているだろうと思う。
数寄屋建築などに関わっているところは別として、一般的な伝統工芸からは建築業界や建築施工の知識が足りない。値段の出し方も分からないので検討の台にも載れていないこともある。
逆に建築家は伝統工芸の限界と適用性、つまりどうすればどうなるかという仕様が分からない。条件と仕様が分かれば、建築家は解決して構築することができるけれども、使えるかどうか分からない伝統工芸の知識を数多くの現場を見に行って蓄えるのは現実的ではないだろう。
建築と伝統工芸の間には繋げ役が必要である。
大雑把にいうと適用範囲と施工性さえ確認が取れれば、あとは仕様と値段に折り合いをつけるという、ごく普通のお商売の話に調整できるはずである。その際、建築家の視点と職人の視点の双方を持っているとスムースだろう。建築家の空間のコンセプトを理解して実現性のあるものを提案するべきであるし、職人の得意とする範囲とできることから構築すべきである。つまり相手の仕事を限ってしまうということだが、限られた範囲の中で良い仕事ができるとも言えるし、下手に限ると本領が発揮できない。
伝統工芸を建築に取り込むためには、建築家と職人、両方の視点を持って自由に繋げ、適切に限ることのできる役割を担う必要がある。