天然漆で作る研ぎ出し体験キットのパッケージデザイン。唐塗と呼ばれる変わり塗は、最後にペーパーなどで模様を研ぎ出して仕上げる工程がある。このキットは、その工程を体験、また出来上がった漆塗の箸を使ってもらい、伝統工芸に触れる機会を増やそうとする試みである。
もちろん伝統工芸の職人が手がけたものであり、販売数量も極端に少なく、さらにキットの意図を考えると高価なものにしたくなかったため、パッケージと体験説明書のコストを極力下げることを念頭においた。そのため、全ての素材をPPの袋にいれ、コンビニのコピー機でPDF片面印刷したA3サイズの説明書で包む、という方法を取っている。A3サイズの紙を4回折るとこのパッケージが出来上がり、パッケージを開くと体験の説明書になっている。箱とは違って捨てるものも少なく、体験者の負担が少ないことも良点である。
実は、紙を折り包み整えた姿は、以前に日本に伝わる「折形(おりかた)」を研究している際に考案していた。それを今回のキットのためにサイズと意匠を調整している。折形に倣って整えた形は美しく、是非ともいろいろな挑戦をしたいと考えてはいるが、実はこの形は現在の機械では折れない形であり、手で準備する範囲のロットしか作成できない。そのことがさらにはかなさと手作りの仕事を感じさせ、パッケージに折形を適用する魅力となっているのかも知れない。
折形をそのまま伝承するのではなく、現代のパッケージやデザインに適用することは、今後も機会がある限り、取り組み続けたいテーマのひとつである。