信頼あるワインダー(機械式時計のゼンマイを自動的に巻き上げるケース)で名高い“SwissKubik”に日本国内で漆と蒔絵を施した製品。時計を趣味とする方に対し、相応しい品質でその趣味を支える商品として、“SwissKubik”の輸入代理店と“彦根仏壇”の製造販売店とが共同で開発し、当事務所が蒔絵をはじめとするデザインを担当しました。
手作りの時計ほど精緻な工芸品も珍しいと言えるでしょう。そのスケール感についていけて間延びしない精緻さをワインダーに与えること、そして時計の鑑賞に邪魔にならない渋味を持つことが最初に設定したテーマでした。
この2点のデザイン上のテーマに応えるために、天面の区切った範囲に市松状の蒔絵を配置することを提案し、それぞれの限定された小さなブロックの中に細かい蒔絵を施しています。蒔絵の文様は吉祥文様を中心に和文様を描き起こし、蒔絵師と相談しながら細部を調整しました。
漆の艶やかな表情と金蒔絵の精緻さ、文様の縁起を添えて、時計へのこだわりをより楽しんでいただければ嬉しく思います。