西川貞三郎商店は国内では清水焼の製造卸として、海外にも1921年から日本の伝統工芸品の輸出を始めている老舗である。今回、本格的に清水焼を海外で展開することを希望され、ブランディング・コンセプトの整理からロゴ・デザイン、商品ブランドの構築、パンフレット、動画、パッケージ、商品開発など会社全体のリブランディングの相談があった。
あらゆる文化が集積してきた京都には特徴らしい特徴がないと言われる。良いものを常に周囲から柔軟に受け入れて楽しんで来た文化であり、正統なものも変わったものも洗練し楽しむ気概が京都にはある。清水焼も染付、交趾、織部、天目など多種多様な焼物が作られ、特徴を表す言葉がない。このとても説明しづらい「清水焼」を海外で売るために、まず「清水焼を簡明に説明できること」を目指している。特に知名度が低い海外で活動するためには、海外の店舗に立つ人にも簡単に説明して貰えるぐらい明瞭性を伴って伝えられる状態をつくろうと、商品を3つのブランド「見立て」「貞雲」「かより」に分け、清水焼の楽しみ方を3つ提示するように考えた。
3ブランドはそれぞれ、職人の技を注ぎ込んだ「貞雲」、華やかさと遊び心がある「かより」、景色を織りなす釉薬の「見立て」の3つの文化が清水焼にはあるとし、各商品をこれらの枠にはめて見せることで清水焼の形質を簡明に伝えようとしている。清水焼において商品ブランドを作ってラインで見せることは恐らく始めての試みであり、展示会でも説明し易く、分かり易いと好評を得ているようである。