包丁の形は完成している。包丁を見ていると料理人の体の動きや日本料理が変わらない限り、変える必要がないように見える。道具としての性能とは関係のないところで柄の素材や仕上げなど装飾的な部分で価格を上げたり色々と工夫されているが、そのことが返って道具としての堺打刃物の良さを見えにくくしている、と考えている。また、鋼材や作り方で包丁の値段は上下し、実は高いものが良い品質とは限らない。分かっている人は分かるけれど、知らない人には難しい。伝統工芸を性能で選べない状況が伝統工芸の位置を危うくしている、という実感も常から持っていた。そのように捉えている中、新しい包丁ブランドの相談を受けたことからこのプロジェクトは始まった。
重陽は「道具としてこれ以上の性能を持つ包丁は作れない」という包丁のシリーズである。包丁自体や柄をデザインし直す話も上がったが、直ちに拒否している。道具として扱い易く、そして作り易い形を求めて来た結果、完成してきた形は美しい。伝統とはそのような物である。それを損なわない振る舞いだけが必要であり、ブランドとして確立させるべきポイントだと考え、商品開発からコンセプト、ロゴ、刻印、パッケージなどを整理させて頂いた。
重陽は、飽くまで「道具として最高峰」を作るブランドである。価格ではなく、品質で一つのシリーズを作るというのは堺打刃物では、恐らく初めての試みだろう。
ご購入方法については堺菊守 河村刃物株式会社まで。http://chouyou.kikumori.co.jp