堺打刃物を扱う河村刃物。代表ブランドに「堺菊守」があり、調理用和包丁の業界では実直な製品と対応に長年の信頼を得られています。「堺菊守 菊月」は、2013年に開発された堺菊守ブランドの中でも最高品質の包丁「堺菊守 重陽」の派生シリーズとして2021年に開発されました。
最高品質の包丁を表面を鏡面仕上げにした「堺菊守 重陽」が一定の評価を得ていたのに対し、品質は最高級をそのままに、仕上げにこだわりがある方に向けて、様々な仕上げの包丁を提案するものです。「堺菊守 重陽」は、あくまで包丁の品質をストイックに追求し、今製造できる最高の包丁を提供するのに対し、「堺菊守 菊月」は品質とは異なる感情的な仕上げの好みを満足していただくシリーズです。
2013年に白色をキーカラーに設定した重陽シリーズに対し、新しく展開する菊月は黒色をキーカラーに設定し、それぞれのページの背景色に適応しています。写真も背景に沿って撮影しており、イメージを充足させています。それらの「重陽」と「菊月」の2種のシリーズを堺菊守ブランドから抜き出したカタログになることから、表紙は2本立てとし、左右で「重陽」と「菊月」のそれぞれの表紙となるように2つのイメージをちょうど真ん中で割って並べました。片身替りと呼ばれる2種の異なるコンセプトを混ぜず調整せずに2つに割って両立させるデザイン手法は、堺が旺盛であった時代の桃山文化からの応用ですが、その寛容さと力強さを生み出す手法が今回のプロジェクトに適していると感じています。