仏壇の障子の八双金具の新デザインの依頼をいただき、天平文様をモティーフにした錺金具を設計しました。
出された要望は「今までにないオリジナルでありながら変わったものではなく、伝統に則った汎用的で長く使えるもの」という伝統に挑むような依頼でした。その条件に応えるため、新しい変わったデザインではなく伝統的なかたちで、今まで錺金具に使われて来なかったものを図案化する手法をとりました。つまり金工品にはあまり注目されていなかった古典を探し出し、現代において金工品に写す、という手法です。その意味で、仏教が日本で広まった奈良時代の正倉院宝物に見られる天平文様は最適なものに思えました。
天平文様は、現代でも仏壇に使われる打敷と呼ばれる三角形の布にも使われ、仏壇にとっては馴染みのある文様です。しかし金工品としてはほとんど注目されてこなかった文様でもありました。今回はその天平文様を錺金具の図案化し、新しい伝統への答えとしています。