老舗の黒板メーカーのためのロゴ。鶴が訪れたという大阪鶴見区で大正四年(1915年)に創業し、100年を超えて職人の手作りで展示用品を製作されてきた企業である。教育設備を真面目に作り続けてきた実績とその歴史性を表すため、光琳鶴紋をモチーフとした。さらに鶴と“付き物”である松を伴い、創業年と創業地を添えている。
紋形は鶴の目を円弧の中心に規定したり、底部の直線を円弧にするなどの紋帖そのままではなく細かい調整を入れた。規定を強めたり付加することで光琳鶴紋から絵画的な要素を取り除き、家紋の特徴である円の使い方の練度をより高めることになっていると期待したい。
もちろん家紋の形状は洗練されているが、光琳鶴は紋帖そのままの形はもの足りていないと感じていた数少ない紋のひとつである。家紋の持つ歴史性に対する挑戦のような課題となったが、比率と幾何学のルール付けをもって対抗しようとしている。そのことが少しでも同時代性を感じさせるものになっていれば嬉しく思う。